南海トラフ地震の兆候あれば、市町村9割が避難喚起検討

5/28(月) 6:34配信

朝日新聞デジタル

 今後30年間で70~80%の確率で起きるとされる「南海トラフ地震」。朝日新聞社は、被害が想定される14都県計139市町村に、地震発生の恐れが高まれば気象庁が発表する臨時情報への対応をアンケートした。発表されてもいつ地震が起きるか分からないが、9割が住民への避難呼びかけを検討していると答えた。

 南海トラフ地震は震源域が東西に広く、予知は困難とされるが、過去には東海、東南海地震の後に南海地震が起きたことがあり、気象庁は昨年11月から「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)」を発表する運用を始めた。アンケートは、国が津波避難対策の特別強化地域に指定した関東から九州までの139市町村を対象とし、136市町村から回答があった。

 (1)南海トラフの東側か西側だけで破壊が起き、マグニチュード(M)8クラスの大規模地震が発生(2)前震の恐れがあるM7クラスの地震が発生(3)東海地域にある複数のひずみ計で変化を観測――の3ケースでそれぞれ臨時情報が出た場合、住民に避難の呼びかけを検討するか尋ねた。

 「検討する」と答えた市町村は(1)と(2)の場合がともに126で9割超。(3)の場合も119市町村が検討するとした。呼びかける避難情報の種類は「避難準備・高齢者等避難開始」が最多で「避難指示」「避難勧告」と続いた。「その他」を選んだ静岡県焼津市は「市民に家具固定や備蓄品、避難場所・経路の確認を呼びかける」と答えた。

 「検討しない」と答えた愛媛県伊方町は「曖昧(あいまい)な情報では混乱を招く」、高知県安芸市は「解除できない情報は出せない」、鹿児島県大崎町は「現在の避難基準は、津波注意報が発表された場合と定めている」と理由を説明した。

 避難に耐えられる期間は、3日程度までと答えたのは76、1週間程度までが40、2週間から1カ月程度までが3。3日程度までを選んだ愛知県豊橋市は「市民生活への影響が大きい」、静岡県沼津市は「避難所の食料備蓄が3日分程度しかない」とした。

 被害を減らす社会的対応や規制は4割の55市町村が必要と回答。内容(複数回答)は要配慮者利用施設の避難義務化が55、学校園の授業中止が51と多かった。他は大規模施設の営業停止が30、鉄道の運行停止や空港の閉鎖が18、車両の通行規制が16だった。

 愛媛県愛南町は全項目が必要とし、「社会全体で避難に関する共通認識を持ち、地域差なく避難する体制が整えられていなければ困難」とした。「必要ない」とした宮崎県新富町は「『可能性が相対的に高まった』という状態で住民生活、経済活動の規制は適当ではない」と説明した。

 自治体から社会的規制や防災計画の目安となるガイドラインを求める声が強く、中央防災会議の作業部会は年内に議論をまとめる予定だ。


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 〈南海トラフ地震に関連する情報(臨時)〉 想定震源域の一部でマグニチュード(M)8クラスの地震が起きて残りの領域でも起きる可能性があったり、前触れかもしれないM7クラスの地震やプレート境界でのすべり現象が観測されたりした場合、地震学者らの検討会が分析・評価。気象庁が異常の検知から最短2時間後をめどに「大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっている」などの表現で発表する。予知は困難として、大規模地震対策特別措置法の「警戒宣言」に代わり昨年11月から運用が始まった。